オセロの哲学者たち 第3回「第149回品川シーサイドオープン」

久しぶりの品川支部へ

10月26日(土)、翌日に東京に用事があり、そのついでに久しぶりに品川でオセロを打つことにする。とんとメジャー大会にも出ていないので、県外でオセロを打つのは何年ぶりだろう?

仕事関係でも最近は大阪に行く機会が多くなり、東京に来る機会がすっかり減ってしまった。品川で降りるのも一体何年ぶり? といった感覚である。名古屋から見ると東京への距離は大阪の2倍を超える。そんなに遠いイメージはないのだが、新幹線の所要時間や運賃を考えると、そうなのだろうと再確認する。その分やや足が運びにくい。

品川から都営バスに乗って、窓から流れる景色を眺めていると、最近は勉強でセミナー会場に行く用事はあっても、それ以外で外出する機会はなくなったなーと気付く。最近、仕事で年配の方から「人生は余分なものが楽しい」と話を聞いたことを思い出す。余分なものがない人生というのは効率的なようでももったいないのかもしれない。

コミュニティぷらざ八潮は、廃校を利用した施設で、噂には聞いていたものの、「本当なんだなー」と、あらためてその利用方法に感心する。かつて品川支部は天王洲アイル駅近くのテナントを借りていたのだが、そこがテナントの契約の問題で手放さざるを得なくなり、現在はこちらを主の大会会場にしている。

コミュニティぷらざ八潮に会場が移ってからそれなりに時間が経過していて、ここにはじめて来るというだけで、しばらく東京でオセロを打っていないのがよくわかる。

もともと東京でのオセロ大会は新宿の「コスモ」という囲碁・オセロサロンで「関東オープン」が行われていた。毎月チャンピオンクラスが集まるハイレベルな大会で、まだオンラインオセロが普及しておらず、オセロにおける地方格差が強かった時代に貴重な実戦の場となっていた。昔の全日本選手権は地区の代表者64人が午前中に4人ずつのリーグに分かれて、その優勝者が午後の決勝トーナメントに進む形式であった。

村上健九段が当時、実力は優勝候補とされながらも、毎回予選でどこか星を落としていたというジンクスもあった。この形式ゆえの色々なドラマも歴史の懐かしい1ページになっている。この午前リーグ戦方式だと、共通認識だったのが東京代表と同じブロックに入りたくないことと、関西と新潟も要注意ということであった(関西には爲則九段、新潟には滝沢雅樹九段がいた)。

東京代表だと相手がかなりの強豪であることは間違いなく、それは地方代表者からするとよくわかっていた。そのような東京代表の強さを支えていたのも、人口の多さから来る層の厚さもあっただろうが、関東オープンのようなハイレベルな大会が毎月行われていたことも要因としてあるだろう。

いつからか関東オープンはなくなり、途中、長谷川前会長が中野に開いたオセロ・囲碁センターで大会が行われていた時期もあったが、いつの間にか品川支部がその役目を引き継ぎ現在に至っている。ハイレベルな月例大会は東京のひとつの伝統になっている。

大会会場内観。もともとは通常の教室ではなく、図工室などの場所だったのだろうか? 盤、机とも当然のようにやりやすそうなサイズで、さすが品川支部といった印象。

第149回品川シーサイドオープン

 

1回戦 T三段戦 2石負け

それでは大会を振り返ってみる。

初戦はT三段。ジュニアプレイヤーだが、すでにオープン大会の優勝もある。序盤で大差の優勢になったものの、中盤から終盤にかけて緩手を連発して、接戦の終盤に突入。残り時間わずか、ここで敗着を打つ。

53まで白番

正解はg8で、以下H7→C8→D8→B2→H8→G7で白4石勝ち。

実戦はC8→D8→B2→H7→G7→G8→H8で引き分け。実戦の局面はどこかで返し忘れがあったのか黒2石勝ちであった。しかし、引き分け勝ちの権利は黒だったので、どちらにしても負けは変わらない。

問題の局面、そんなに難しくないように見える。ただ、時間に追われながらパッと見で答えを出すというのは私は苦手で、その弱い部分が最後に出た1局となった。

2回戦 菱山裕一四段戦 8石負け

第2戦は菱山四段。これは後でじっくり取り上げる。

3回戦 笠井芳幸初段戦 針落ち負け

第3戦は笠井芳幸初段。31まで白番。上手く右辺に白の1箇所空きを作り、少し打ちやすいのではないかと考えていた。

31まで白番。

しかし、いざこの局面になると次の手に困る。白D2が第一感だが、黒C2と応じられるのは目に見えているので、その後の進行が悩みであった。

D2→C2の時に白E2に打てれば良いのだが種石がない。D2→C2→A2で種石を作ろうとすると、黒A3→A5で左辺に白が打てない双方C打ができる。下辺が黒の好きな形にできる状態なので、左辺をそのような双方C打ちにするのは危険に思えた。

D2→C2→C1という手順も浮かぶのだが、これは感覚的になるべくなら打ちたくないところ(仮想図①)。私はD2→C2→C1→E2→F1→F2→G1→B2でホワイトラインが通る上に、黒は下辺で手得でき、白難しいと考えて却下した。しかし上記の手順後に白はG2の手があり、むしろ白が優勢なようだ。

仮想図① 黒番

実戦の32ではA5に打つ。黒がA6と素直に応じれば、D2→C2→A2と楽にE2へのアクセスができる。問題は放置された時で、D1→F1→E2→D1→C1→F1→C2と進んだ時に白はE1と打ちづらい(仮想図②)。

32まで黒番

仮想図②

仮想図②からは白A3で苦しいながらもなんとか戦えるのではないかという読みであった。この手もF3の石を白くしてしまい、右上の攻め筋をなくす手であるので手放しで喜べなかったが、対局中はこう打つしかなさそうだと考えていた。32でD2→C2→C1という手順を選べなかったことで、ここで黒有利に逆転する。

実戦32~36は前述の想定していた手順。下図は36までの局面。ここから自分の想定ではC1→F1→C2という読みで自然に見える。しかし、黒はここでa6と打ちこれが緩手であった。

36まで黒番。

理論で説明すると、ここでのa6はいわば黒の余裕手であり、すぐに放出する必要はなかった。実戦はA5→C2→E1→F1→B1と進んだ。上部で黒と白が2回ずつ打って、上辺はやや悪形、左辺は白に余裕手がひとつという形である。もし、37からC1→F1→C2→A3と進めば、上部で黒は2回、白は1回と打ち、左辺には白の余裕手はない。これら比較からA6は緩かったと考えられ、以降、白優勢で対局は進む。

しかし59(途中パスがあった)で白は針落ち。3連敗となった。

4回戦 O1級戦 22石勝ち

4回戦はジュニアの選手。この対局も相当に厳しく、40手まではほぼ互角の良い勝負をしていた。序盤のセンスがとても良い印象で、今まで多くの有段者が打たなかった急所の手をおそらく初見で打っている。結果的に終盤の入口で悪手が続いて大差になったが、精度が少し高まればもっと勝てるようになるだろう。この対局を見た限りではすでに1級の実力ではないように思う。

5回戦 葛西裕紀1級戦 44石勝ち

5回戦は葛西裕紀1級と対局。「色々な手を試してます」と局後に話していた通り、見たことのない手が続く。中盤入口から大差がついて44石勝ち。これで2勝3敗となる。対局後は色々と雑談。初対面の人ともオセロを通じて話ができるようになるのも、大会に出る良いところだと思う。

6回戦 児玉朋幸初段戦 28石勝ち

6回戦は児玉朋幸初段と対戦。「五段が相手か……」と残念な様子。聞くとここで勝つと二段に昇段とのこと。「弱い五段だから大丈夫ですよ」と言って対局開始。

中盤の真ん中あたりまでは良い勝負で、自分の体感では白(自分)がやや苦しいと感じていた。

28まで黒番。

問題となったのは28までの局面(上図)。私は平凡に黒F8→E8→C8→D2のような進行で、黒はF7の余裕手ができて、上辺でも手を稼げそうな形だったので、白打ちにくいと読んでいた(実際には引き分けの形勢のようである)。

また、次に白がD2を狙っていると考えれば、先に黒F2と打つのも好手である。白がE1やF1と応じてくれば、そこでF8と打てば良く、右上で攻めやすくなる分、交換を入れたことが効果的である。黒F2に対し白D2なら、そこでもやはりF8と打てば良い。先に形を崩さずにF8と打てたことが若干得なように感じる。

本譜の28E1も前述のF2と似たような考えの手だと思うが、放置されると上部に打てないのが辛い。実戦ではE1→B5→A6→F7→C8→A3→A5→F2と、逆に白に上部で手を稼がれてしまった。

この28手から徐々に差が開き、最終的には白の28石勝ちとなった。これで全6戦終了。久々の品川でのオセロは3連敗3連勝で3勝3敗という結果に終わった。

菱山裕一四段との対局

さて、この日一番印象に残った棋譜を振り返ってみる。

菱山四段は不思議なプレイヤーである。この日、遅刻して初戦を不戦敗となったのだが、受付で「不戦敗なら帰ります」と言って、すでに対局している周りを驚かせた。だいたいオセロのプレイヤーの心理は「打ちたい」と思いそうなものなのだが、彼はちょっと不思議なところがある。優勝の望みが低くなってつまらないとか、不機嫌になったとか、おそらくそういう理由ではないと思う。彼は見ればわかるのだけど、性格の悪い人間ではない。普段の付き合いがなくてもそれはなんとなくわかる。周りから「打ってきなよ」と言われて残ることになったのも、彼が好かれているのをよく示している。

「ひっしー」の愛称で呼ばれる彼は、おそらく5年~10年くらいぶりに会うのだが、その時と外見に全く変化がない。オセロ界の年をとらない都市伝説で言えば、神奈川の野田敏達六段や山崎敦之四段の2人が有名であったが、2人の伝説に陰りが見え始めた現在では、おそらく彼がその後継者となり得るだろう。

以前の対局ではたしか自分が負けているはずで、内容は覚えていないが接戦だったように記憶している。力戦系が得意で粘り強い棋風のように思う。暗記派ではない印象であった。1回戦を負けて連敗したくないが、相手が強いのもわかっているので気持ちを引き締めて臨んだ。

黒 菱山裕一 四段 20分
白 私 五段 20分

初手~22まで 白が若干優勢に

9まで白番。

9の手は1994年の世界選手権の決勝第2局、滝沢雅樹九段とデンマークのカーステン・フェルドボーグの対局で打たれた手である。当時のオセロニュースに掲載された滝沢九段の自戦記では、黒のフェルドボーグのこの手を「恐るべき新手」と書いていたように思う。この9手目の対応を誤り、滝沢九段は苦戦に陥るのだが、逆転して世界チャンピオンとなった。これを記憶しているのは、私がオセロを始めた時にはじめて送られてきたオセロニュースがこの世界選手権の特集で、滝沢九段の棋譜を何回も並べて練習していたからである。

菱山戦10~22の進行

自戦記にはこの9手目への対応も解説されていて、それが本譜の10~14の手順である。14の大胆な中割が初見だと打ちにくいが、これで少なくても白は互角には戦えると思う。

15まで白番

15までの局面で第一感として浮かぶのはC6とF2で、C6は一石返しで中に入り込む手であるし、F2は一石返しと同時に黒が打ちたい手を先に打つ手でもある。他にD2やC2も目に入る。D2は真ん中に固めるような手でこのような手は相手が周囲を囲いやすく有効な場合も少なくない。しかしC3の石まで返ってしまうのが不満でちょっともったいない気がする。C2は次にさらにD2を打つことを狙う欲張りな手だが、黒A4などと打たれて種石を切られると、C2の白石が外に浮いたような形になる。

D2やC2のような手も考えられる手だが、この局面ではより有効そうなC6とF2を先に考えてみるべきだろう。C6が自然な手に見えて問題もなさそうに見える。しかし、ここでD2に打ったとしても、黒は白C6を防ぐ有効な手はなく、D2から先に打てば、C2も続けて打てるように見える。F2→C7→C6のような手順で白が中に入り込みやや優勢と考え、D2に着手。

16まで黒番

菱山四段は17C6に打つ!

しかし、17で打たれたのはC6! このような壁を作る手は慎重に打たなくてはいけないが、私が想定していたような黒C7のような手は結局のところ、なんの解決にもなっておらず、いたずらに形勢悪化を進めている。相手の手も多くなく壁を破る確率が高いなら、このような外に回らないで横取りをするような手が最善であることも多い。この局面でもこのC6が最善なようである。

18は迷うところ。できれば下部の壁を破りたくないところで、上手い方法がないかまず考えてみる。まず最初に考えたのがC2だが以下A3→B3→D2→C1→G4→A5→G3で、一見引っ張れるようだが、上辺の形が手数を稼げる形であり、無理があるように思えた。

D2は以下A4→B6→C2で黒の石のバランスが良いように見えて自信がなかった。

下手に形を崩すよりも破りやすいうちに壁を破った方が良いのではないかと、一転してそちらの手を考えてみる。と言っても、壁を破る手でもそんなに良さそうな手は見えなかった。唯一、打てそうに見えたのがD7で、このような手はノーカンの進行でも壁を破る時に出てくる(参考図①:ノーカンの進行のひとつ)。

参考図①:ノーカンの進行のひとつ

18D7なら以下C7→E7→E8→D8→C8→A5で、B6の手が白の余裕手になって、まずまず戦えるように見えた。実戦ではここまで読んでみて、形勢は簡単ではなく、17C6が悪くないことに気付いた。

19E7は少し緩手のように感じていた。本譜22で展開しづらかった上部に上手く打つことができて、白としてはやや優勢ではないかと感じていた。

22まで黒番。

23~38まで 白のリードを守れず形勢は互角になる

23~38の進行

25はD1に打ってくると思っていたので意外であった。26D1と打つと白にとって上部が上手く捌けた感じで、やはり白優勢だと感じていた。27は上辺の形をここで決めてしまうのはもったいない気がするが、この後の29~31の手順をおそらく想定していたのだろう。

31のような手は本当は打ちたくないところ。前述の笠井戦でも同じような局面があり解説しているが、上辺の形のメリットを少し殺してしまう感がある。菱山四段も十分分かっているだろうが、この手を打たざるを得ないというのは黒が苦しい局面だと言える。

31まで白番

上手は31までの局面である。盤面が埋まってきて黒の手も限られているので、ここで読み切って勝負を決めたいところである。直感的に勝負どころと感じて時間をかけて考えるが、どうしても明確な勝ち筋が浮かばなかった。

この局面の実戦で早々に勝ちを読み切れれば相当に強い打ち手であると思う。少なくても私よりは強いと思う。

黒にはG5とC8(あるいはB6)の2つの手が残っていて、これを上手く打たせないで手数を稼ぐことができれば、黒には手が残らないのでおそらく白が勝ちきることができるだろう。相手の手が詰まっている時は、一気に勝勢に持ち込めればそれに越したことはない。しかし長い勝負の歴史の中では、勝ち切れなくて形勢が混沌とした対局もあれば、勝ち切ろうとしてかえって無理が出た対局もある。どちらも真理であって、そのあたりが実際の対局の難しい部分と言える。

まず第一感で浮かんだのが、G6→H6→H5→H4→G4で、右辺で手数を稼ぐ都合の良い手順である。この手順はF3の石を白くしてしまうので、黒G2→??→F1で俗に言われるストーナーという手筋を喰らってしまう。それがあったので早々にこの手順は考えるのを打ち切った。

次にG6→H6→C8という手順で、右部と下部の両方に上手く先着しているようにも見える。ただ、例えばG6→H6→C8→G5→E8と進むと、白はF8→G8→F7と手得をすることができて、これも決め手に欠ける感があった。実はG6→H6→C8→G5→E8→F8→G8→F7の進行だと5行が真っ黒になり、A5の置き打ちが成立して白優勢なのだが、実戦ではこれを見落としていた。

さらにG6→H6→E8という手順も考えてみたが、こちらも以下F8→C8→F7→G8→G5で手を渡されて、あまり良いようには感じなかった。

初手がG6ではなくG5だったらどうかとも考えてみた。こちらはG5→H6の交換後、白がC8に打ってもE8に打っても似たような展開になる。ただ、G6の場合はG6→H6→C8の後、黒がF7と打てば、白E8でG5とF8を見合いにすることができる。これはこれで実際には難しいのだが、ぼんやりとG6の方が黒が間違えそうな気がしていた。

結局、明快な好手順は浮かばなかった。わからないなりにストーナーは打たれると良くない感があったので、とりあえずG6と打ってみて、相手が読み通りにH6と辺をとるか、あるいはG5など違う手を打つか見てみることにした。

33まで白番

実戦で菱山四段は33H6と打ってきた。この局面で当初の予定はC8であったが、「C8に打った後だと左辺が打ちにくくなる」と気付いて、34A4→35A5の交換を入れた。このような観点はとても大切だが、この局面では結果的に大きな失敗であった。この交換がなければ、前述のように黒G5に対して白A5の置き打ちが成立する。34は当初の予定通りC8と打って、左辺は温存しておくべきであった。ここで序盤に築いたリードが失われて、互角の形勢に戻った。実際に打っていて難解な局面に感じていた。

39~終局まで 難解な終盤入口

オセロで一番難しい箇所はどこだろうか? 純粋に読むのであれば序盤であればあるほど難しいと思うが、有段者であれば定石を知っているのでその難しさは事前の研究でいくらか免れることができる。高段者であれば時間が切迫していない限りは、5箇所空きくらいならまず間違いを打たないであろう。しかし10箇所空きならどうだろうか? 私などは実戦でよく間違えるが、さらに上のレベル(メジャー大会の入賞常連やチャンピオンレベル)であれば間違いの確立はかなり減る。しかし、序盤から中盤にかけての知識がなくなり、まだ終局図が見えない20箇所空きくらいではどうだろうか? もちろん局面によるだろうが、ここが最もオセロで難解で実力差が出やすい場所であると思う。強いプレイヤーというのは、この時点から最善かそうでないかは別にして(往々にして最善であることは多いのだが)勝つ方向に持って行くことに長けている。それは局面を点としてみていないで、線としてみている感覚だと思う。その感覚を持つことがさらにレベルアップするひとつの要因であるように感じている。

菱山戦39~60の進行

38まで黒番

こちらが局面を難解と捉えていたように、菱山四段もまたどう打つべきか悩んでいたようだ。38までの局面で時間をかけて考えていた。黒はどう打つべきだろうか。

この局面で黒が考えていたのは、F7かF8かどちらを選択するかという問題だと思う。コンピューター的にはF7で引き分け、F8で白6石勝ちということである。

実戦中は、F7で白が若干苦しいのではないかと考えていた。E7→A6→A7→B6→A2と進むと、白にはほとんど手が残っていない。G7で偶数にはめ込むくらいしかないと考えていたが、無理矢理な進行なのでおそらく黒が勝ちなのではないかと感じていた。

また、実戦ではそう進んだのだが、黒F8にはF7→B8→B7という手順があり、これはかなりの混戦模様となる。F7が黒良さそうなだけにこちらはやや劣るように考えていた。

実戦で菱山四段が打ったのはF8であった。

39まで白番

前述の通り、ここからF7→B8→B7というブラックラインを強引に通す手を考えていたが、それに対しては黒にF1というさらに強引な返し手がある。結局、他に選択肢がないと考えてF7に打った。以下読み通りに43F1まで進む。

43まで白番

40でこの進行を躊躇していたのは、この局面から本来はB2と打って、以下A1→A2→A8→B6→A7→A6辺りに打って手を詰めたいところである。しかし、右部がきれいに真っ黒になってしまったばかりに、それでは黒パスになり逆偶数になってしまう。かといって、問題の局面からG1のように穏やかに打っても、以下A8→B6→A2で白は右部のXかCに打たなくてはならず、それもそれで負担が大きい。

良い手順を思い付かず、泣く泣くG1に打ったのだが、ここでの正解はG2で以下A1→A6→A2→B6できれいに偶数を保ちつつも左辺も捌くことができる。これならば白6石勝ちであった。

G2でもまだ白2石勝ちの形勢であったが46でとうとう敗着を放つ(下図)。

45まで白番

ここから白A6→A7→B6→A2→G2→H1→H5→H4→H7→H8→H2→A1→B2→G7→G8で白の2石勝ちであった。ほとんど辺をとられるので、これで白が残っているとは想像が難しく、局面的に難しかったとも思う。

実戦は偶数は保ったものの黒に上手く石をとられて8石負けとなった。なかなかの激戦で、勝負に負けたものの心地よい打ち切った感があった。菱山四段と局後の検討は長く続いた。

菱山戦の2つの局面

対局後の感想戦で、この対局には2人が全く考えていなかった手筋がいくつかあることに気が付いた。ひとつは39までの局面である。

39まで白番

ここで私は他に手がないと考えてF7に打って、むしろ黒の悪手につけ込んで混戦にしたくらいに思っていたのだが、実際には12石損の大悪手であった。もし興味がある人は最善を考えてほしい。

この局面ではG8と平凡に打つと、以下F7→A6→A7→B6→A2で平凡に白ダメだと考えていたのだが、そこからG7→H8→B7が好手順で、これなら白が勝勢であった。白がB6に打った時にC6が返らないことがポイントであった。

40まで黒番

もうひとつの局面は40までのもので、ここで菱山四段はB8と辺をとるが、これも普通なようで12石損の悪手であった。こちらも興味がある人は最善を考えてほしい。

正解はA2で、スマホがその答えを表示した時、菱山四段は「え、なんで?」と言葉を漏らした。正解を示されても、その意味を理解するのに難しい。A2→G8→G2が好手順で、このライン通しを無傷で切る方法がない。以下H5→F1→H1→A1→B2→H4→B6→H7→H2→G1→H8→G7などと進むと、はっきり黒勝勢である。

このような手順というのは、局面を点ではなく線で捉える強い有段者だからこそ、逆に見えにくい手順かもしれない。流れ的に41はB8が自然なのである。

今まで流れで読んでいたところに、相手が緩手を打って流れがなくなる。そしてそこから流れを再構築するのは容易ではなく、また緩手が放たれる。悪手が悪手を呼ぶというのは案外、そのような理屈なのかもしれない。40、41で五段と四段が12石損を繰り返しているのは、それだけオセロが難しいものと物語っているようでもある。

私はただ「今日もずいぶん間違えた」と反省するのみである。

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ABOUTこの記事をかいた人

思索にふけるのが好きな無名の作家・ブロガーです。職業は理学療法士、整体師。特技はオセロ(五段の実力)です。将棋、競馬など勝負ごとやゲームも好きですが、最近はブログが忙しくてあまり手を付けられていません。ブログに興味を持っていただいた方は、更新情報もつぶやくので、Twitterのフォローをお願いします。(下のボタンを押すとTwitterのページに移動します)。