前回、希望を叶えるためには、それに伴うデメリットを受け入れないといけない、何かを手離さなくてはいけない、というようなお話をしました。そして、多くの人はデメリットを考えて、希望を叶えない方を選択しているとも書きました。
発展させて色々考えると、物事を上手く運ぼうとするには、何かを始めるよりも何かをやめることの方が大切なのではないかと思い到ります。
昔から「断捨離」という言葉がよく使われますし、近藤麻理恵さんの片付け術は国内を超えて、アメリカでも受け入れられています。
時代や国を超えて、ものを整理する、特に捨てるという行為は、何か人の心に与えるものがあるのでしょう。
物理的に言えば「整理する」「捨てる」なのですが、精神的に言えば「やめる」なのではないかと思うのです。
プロ野球のバッターが成績を残したフォームを変えることはよく見られます。あのイチローもデビュー当初に圧倒的成績を残した振り子打法をやめています。
何か成長したり、向上しようとした時に、前から続けているものがあると、それが邪魔することがよくあります。やめないと新しいものを始められないのです。
僕も理学療法士として治療技術を習得する時、新しい技術を習おうとすれば、今まで勉強に使っていた時間のどこかを空けなくてはいけません。かけられる時間や費用が有限な以上、始める前にやめなくてはいけないのです。
最初のうち、僕はやめるという行為がなかなか決断できなかったのですが、やめたら終わりではなく、また戻っても良いと考えるようになりました。そして、いざやめてみると、思ったより困らずスッキリすることに気が付きました。頭が整理されて、意欲も高まったことが思わぬ発見でした。
時に、やめたり、離れたりしないと得られないものがあります。それは人でも同様で、その人と別れないと気付かなかったり、得られないものもあります。そのような経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
悲しいことですが、僕はそれも運命だと思っています。でも、別れてもまたどこかで繋がるかもしれません。だから、前向きに生きていた方が良いと思うのです。
数々の選択が人生を形作り、彩りを加えます。
イチローは振り子打法をやめましたが、王貞治さんはどんなに不振で、監督から助言されても一本足打法を続けました。
それは人柄として何となくわかるような気がします。「続ける」「捨てる」の選択が人生を個性的に、魅力的にしてくれるように思います。