男いっぴき猫を飼う⑤ 〜猫とのこれから

うちの猫は2019年の4月で満10歳を迎えました。猫としては高齢の領域にさしかかっています。昨年の夏に首輪をしている部分に黒い小さなできものを2つ発見しました。猫の場合、小さなできものでも悪性の場合があるので、すぐに獣医さんに連れて行きました。剖検をしてもらい、結果は脂肪の塊ということで胸をなで下ろしました。この時、猫がうちに来てからはじめて他の場所に預けました。猫がいない我が家というのはずいぶんと不思議な感じがしたことを覚えています。

このような出来事があり、10歳という節目の年齢も迎えて、いつか来るお別れの時も意識するようになりました。もともと獣医さんから肥満を指摘されて続けていて、そこまで長寿はできないかもと考えていたので、その時はすぐ来るかもしれないという意識でいます。

最後までペットを飼う以上は(自分が先に死なない限りは)いつか来るお別れです。それがあまりに悲しくてペットは2度と飼わないという人もいます。愛情を注いで、自分のうれしい時も苦しい時も一緒にいた存在には、並々ならぬ感情移入がされます。

人間以外の動物は死ぬという概念がありません。生存の危機があれば、それに対して回避しようとする本能的な行動はありますが、いつ来るかわからない「死」というものに対して思いが到ることはありません。こちらの思いとは別に、今日もいつもと変わらずに無垢な瞳を向けてきます。そうするとなぜかますます悲しみがこみ上げてきます。

生後数か月(左)と現在(右)。ずいぶんと大きくなりました。

ペットにしても人間にしても別れはつきものですが、ひどく悲しいものです。しかし、悲しいから避けて良いものではありません。それぞれ形の違いはあるかもしれませんが、しっかり向き合わなくてはいけないものです。その悲しみに何の意味があるのか考えたこともあります。強い感情にともなう出来事は人の心に深い衝撃を与えます。この別れに伴う悲しみもそうでしょう。この悲しみがあるからこそ、何げない日々の大切さがわかり、人の優しさやかけがえのなさ、大切さがわかるのではないかと僕は考えています。

いつか時間が空いたらゆっくり猫と過ごそうと考えていたこともあります。でも、それはあまり良くない考えだということに気付きました。そうやって先送りにしていつか後悔するのではないかと思ったのです。少しでも時間があれば猫とふれあい、一緒にいられる時間を大切にするように心がけています。

もしかしたら、自分の方が先に死ぬかもしれませんが、いつか来る最後の日を心に意識して、猫との毎日を大切に過ごしていきたいと思います。

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兼業作家。2023年4月『園井恵子 原爆に散ったタカラジェンヌの夢』(国書刊行会)上梓。歴史全般が興味の対象ですが、最近は大正~昭和の文化、芸術、演劇、映画、生活史を多く取材しています。プロフィール写真は愛貓です(♂ 2009年生まれ)。よろしければTwitterのフォローもお願いします。(下のボタンを押すとTwitterのページに移動します)。