これは石川五右衛門の辞世の句と言われていて、「浜辺にある砂がなくなっても、泥棒がいなくなることはないだろう」という意味です。
転じて「ブラック企業の種は尽きまじ」ともじってみたくなるほど、世の中にブラック企業の話は溢れています。
過去に職場を転々とした看護師さんから「あそこの病院はブラックだった」と、かつての職場の話を聞くことがあります。ブラックという言葉の程度については主観の要素が大きいので、そこが本当に世に言うようなブラック企業だったかはわかりません。しかし、「ブラック」という言葉はよく聞くものの「すごく良かった」という感想は聞いたことがないので、全ての要求を満たすような職場はなかなかないということだと思います。
誰もができるだけ良い職場を選びたいと考えているはずです。しかし、そんなブラック企業を選んでしまう人がいるのも事実です。僕もいくつかの職場を経験して色々気付いたところがあります。今回は大外れを引かない就職先の選別方法について、考えを書きたいと思います。
個人経営的なブラック企業の特徴
世の中には国公立、公益法人、官公庁、公務員など役所的な職場がある一方で、名物社長が一代で築いた会社のような個人経営に近い職場もあります。僕はどちらも複数勤めたことがあって、その違いを身をもって体験しました。
個人経営に近いというのは、権力がある一点に集中しやすく、その人次第でその会社の色が大きく変わります。それに多くの場合、売り上げが権力者の利益に直結しますので経営に非常にシビアになります。ブラックの威力が強いのは、個人経営に近い業種形態の方が多いように思います。完全な個人経営の会社の場合、もともと会社を築いてきたくらいですから社長の個性が強いのは当たり前で、その個性に適応できるか、相性が合うかどうかも、そこで順風に働けるかのポイントになると思います。
もちろん、個人経営全てが悪いわけではありません。テレビのサクセスストーリーで取り上げられるような素敵な社長もいるでしょう。権力が集中しているというのは決断が速やかになる利点があり、急速に大きく成長する可能性を秘めています。トップにいる人材次第と言うことだと思います。
役所的なブラック企業の特徴
一方で、役所的職場というのは権力が一点に集中しません。逆に言えば責任が明確でないために、当事者意識が芽生えにくいのが特徴です。責任者の権力がそれほど強くなく、売り上げとその人の利益が直結しないために、経営は緩くなりがちです。
このような場合、極端なブラックというのは生まれにくいように思います。ただし、この責任の所在が明確でない図式は、企業の経営スピードを落とします。真面目に仕事をしている有能な人間にとっては、上層部の決断や判断が鈍く、いつまで経っても問題が解決しない企業体質にストレスをためるでしょう。
また、このような「ぬるま湯」体質では、その甘い蜜を吸い続けようとする人間が現れます。流れのない水たまりがやがて淀んでしまうように、居心地が良く厳しさのない職場には、その緩んだ体質を守ろうとする人間が現れます。そのような人は、仕事をより良くしようとする人間の足を引っ張るようになり、そうなると職場の雰囲気はどんどん悪くなっていきます。真面目で一生懸命な人間ほど居心地が悪い職場になります。
もちろん、全てがこのような職場になるわけではありません。あくまで傾向としてのお話です。
給料が不当に高いのは赤いフラグ
これはあまり説明する必要がないのではないでしょうか。その業種の相場に比べて、あきらかに高い給料というのは相応の理由があります。職員が定着しないとか、地理的に不便な場所にあるとか、業務内容に不人気な理由があるとか、とにかく普通の給料では人が集まらないので、そのような値段設定にしているはずです。
本来、給料というのは労働対価であって、誰にでもできる楽な仕事に高い給料は支払われません。そのような意味では、ブラック企業に高い給料というのはごく自然な関係の気もします。
もしかしたら「給料が高い時点でブラックではない」という声もあるかもしれません。しかし、いくら給料が良くてもそれに見合わない待遇という可能性もあるわけで、そのあたりのバランスをいかに考えるかがポイントに思います。
本当に頼りになるのはそこで働いている人の口コミだけ
そのようなブラック企業をどのように見分けるかと言えば、一番信頼できるのは、そこで実際に働いている人の口コミです。とは言っても、そんな都合の良い知り合いがいる確率はほとんどゼロに近いでしょう。
仲介業者が教えてくれる情報もあまり当てになりません。結びつけるのが目的なので本当のことを教えないというより、実際にそこで働いているわけではないので、そこまで詳しくないというのが実情だと思います。仲介業者が基準とする情報のひとつが「募集がよくかかっている」→「離職率が高い」というものです。確かにブラック企業は離職率が高いので、これはいくらか参考になるのですが、離職するというのは必ずしも企業側だけの問題ではないので全てを反映しているわけでもないのです。また、一見して離職率が低いようでも、複数の業者から紹介を受けているだけで、その仲介業者が把握していないだけの場合もあります。
まとめ
色々書いてきましたが、前提として、どんなに良い会社でも、たまたま上司になった人間に問題があれば、やはり居心地が悪くなります。「会社が嫌というよりもあの人が……」というのはよく聞く話です。
身も蓋もないことを話せば、実際のところ、その職場に入ってみないとわからないことがほとんどなのです。
この記事ではいくつかブラックの要素について紹介してきましたが、中でも僕が一番注意すべきと考えている点は、経営者の個性です。もちろんその経営者と相性が良ければ問題ないのですが、人によってはかなりその個性が苦痛に感じるはずです。大企業で経営者自ら面接に出てくることは少ないですが、中小企業で経営者と面接する機会があるなら、そこでしっかりと見定めましょう。
面接する側は優秀な人材を確保するために人を見る目を要求されます。しかし、面接を受ける立場であっても、その後の快適な仕事のために人を見る目は大事になってくるということでしょう。
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