芸大で学ぶ人々
通信教育部では様々な年齢層、環境の人が各地から学びに来ていました。全ての人と交流を持てたわけではありませんが、その人たちと一瞬でも人生が交差したのは僕にとって貴重な体験だったと思います。
通信教育部には現役生と同じくらいの年齢層で大学を専業にしている人もいれば、社会人もいますし、主婦もいます。社会人の職業も様々です。文芸学科であればマスコミで働いている人や文章で収入がある人もいました。
僕の主観ですが、課題を効率良くこなして、修業年数ぴったりの4年で卒業するのは主婦が多かったように思います。やはり、家計を考える身として自分を律する気持ちが強かったのだと思います。
学生の居住地もそれぞれで、関西地方が多いのは間違いないですが、遠方では東京、長野、九州あたりからもスクーリングに出席している人がいました。芸大で通信教育部を設置している大学が当時は少なかったからだと思います。現在は京都造形大学も設置していて、多くの学科を有しています。
芸大というと、才気あふれる個性的な人ばかりというイメージもありますが、必ずしもそうではありません。ごく普通という感じの人も多くいました。スクーリングで大きく自分を主張する人と違い、そのような人は地味で、同人誌の作品も目立たないものと感じていました。しかし、そのような人は着実に卒業して、後年に文学賞を受賞する人もいました。学生時代からの地道な学びが花を開いたのだと思います。
学科ごとの特色
総合専門科目や共通専門科目のスクーリングでは、他の学科の人たちと一緒に授業を受けます。また、専門科目でも一部は他学科と共通のものがあります。
そのような中で他学科との交流もありました。何となくですが、学科ごとに個性というか持っている雰囲気があります。
音楽学科とは同じ時間芸術ですが、文芸に比べると華やかな人が多い印象です。文芸学科は落ち着いていて、静かな中にも情熱を秘めているタイプが多いように思います。
勝手に持っているイメージですが、美術学科や音楽学科は芸大の花形の感があります。
音楽学科の通信生で、ピアノ教室をされている方と知り合いになって、音楽学科の様子も教えてもらいました。
その方はもともと音楽で生計を立てているくらいなので、学習に支障はなかったそうですが、学生の中には音楽の専門的な知識がないまま、入学する人もいて、そのような人は課題をこなすのに相当に苦労していると話されていました。
僕の場合も、音楽は特に難しく感じていて(個人的に苦手というのもあると思いますが)、共通選択科目でも履修したものの、単位を修得することができませんでした。
通学生の場合、受験の段階である程度の能力がないと入学ができません。そこが通信生との大きな違いです。
芸大で学ぶ技能は、中学や高校などで学ぶ一般的なものとは少し違います。スクーリングがあるとはいえ、多くの部分は自分で学習しなくてはいけません。
僕は音楽学科の人に話を聞きましたが、どの学科でも多かれ少なかれ、同じような苦労があるのだと思いました。
その点に通信で芸術を学ぶことの難しさがあります。しかし、それだけに成長の手応えが嬉しいのではないかとも思うのです。
先輩たちとの交流
ほとんど過疎化していた芸大のWebによる学習支援システムですが、それでも入学当初にはいくらか掲示板に投稿がありました。
そんな中で先輩たちとの繋がりができました。1期生の先輩方が1泊2日で合宿をするというので、それに参加させてもらったのも良い思い出です。
詳しい場所は忘れたのですが、滋賀県にあるコテージを借りて、バーベキューをするなどして1日を過ごしました。初対面の人たちでしたが、そうとは思えないほど打ち解けて話せたことを思い出します。
普段、通信で芸術を学ぶという同じ課題に取り組んでいる者同士、通じるものがあったのかもしれません。
1期生はすでに3年目を迎えていたので、卒業までにどのように単位を消化していくか、ということも話していました。僕にはまだ受講していないスクーリングのことや、他の通信制大学と大阪芸大の違いなど、持っている情報を教えてくれました。
それとは別に2期生とも繋がりができて、そちらでは有志で作った同人誌を見せてもらったり、オフ会に参加させてもらったりしました。
皆さん、それぞれ年齢や環境が異なる中、芸大で学んでいて、刺激になりました。
先輩方とはスクーリングが重なった時に、合同の飲み会をして、さらにそこで繋がりができて……と大学での楽しみがひとつ増えました。
「シナリオ演習」(2年次履修)の講師は映像学科の方だったのですが、駅で先輩後輩が仲良く話すのを見て「文芸は結束が固いな」とお話しされていました。
そのような付き合いは、自分自身のスクーリングの機会が減ることでなくなっていきましたが、時々風の便りで先輩方の卒業を聞いて、懐かしさを感じたことを覚えています。
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