ストレスの多くは人間関係によるものだと言われています。確かに、自分に合わない人と付き合っていくのは、強い忍耐が必要になります。
しかし、一方で気が合っていた友人や恋人、時には夫婦でさえも別れてしまうことがあります。なぜ、一度は親しくできていた相手と決別しなくてはいけないのでしょうか。
自分もしくは相手が成長して、その人と何となく合わなくなったとしたら、それは仕方ないと思います。そのような別れは避けることができません。しかし、多くの別れはそのような理由ではない気がします。
先日(2019年4月17日)亡くなられた漫画・劇画原作者の小池一夫さんはツイッターで次のようなつぶやきを残しています。
この小池さんの言葉が問題の本質をよく表しているように思います。人付き合いで一番難しいのは、親しい人に礼節を持って接し続けることだと僕は考えています。多くの人は親しくなればなるほど礼節が失われていきます。
それゆえに夫婦のようなこれ以上なく好きだったはずの相手と、これだけ多くの人が別れてしまうのだと思います。夫婦については「恋は盲目」と言うように、そもそも愛情自体が錯覚だったということもあるかもしれませんが……
親しくなれば相手に遠慮がなくなります。許してくれるという厚意に甘えるようになります。その甘えが小さなひずみを生み、次第に大きな隔たりへと変わっていきます。一旦そうなると、ほとんど修復はできません。その時になって心を入れ替えようとしても遅いのです。
これは相手を大切にするだけではありません。相手の大切にしているものもまた、同じように大切にすることが大事です。例えば、相手の家族、友人、趣味などです。よくあるのは相手を大切にしているつもりでも、その人の価値観や周囲をなおざりにしていることです。
仕事の愚痴ばかり話したり、他人の悪口ばかり話したり、たまにはそれも良いでしょうが、そればかりだとそれは相手に甘えていることに他なりません。そのような話を相手がずっと聞きたいと思っているでしょうか。友人あるいは恋人として付き合い始めた頃、仕事の愚痴や他人の悪口を並べてはいなかったはずです。親しくなったことで礼節が失われているのです。
僕の知人でも他人の批判ばかりしている人間がいます。それは他人に向けられたものであっても、聞かされる人は良い気持ちはしません。これも親しくなったがゆえに出てくる問題なのだと思います。
そのような状態を続けていても、自分が相手を大切にしていると認識しているために、相手が決別しようとしても理由が分からないのです。相手が変節したと考えて逆恨みするようになります。
相手の価値観を尊重し、仕事や趣味を尊重し、夫婦で子供がいるなら子供を尊重し、そうなれば相手が離れることはないはずです。相手が離れようとしているなら、まず自分に何か問題がなかったか考えるべきです。もし自分に非がなく、それで離れる相手なら、それは友人あるいは異性を見る目があまりにもなかったということです。こちらから別れを積極的に進めるべきでしょう。
関係を保てている相手でも、我慢から成り立っているだけで礼節が失われている場合も多いと思います。使い古された表現ですが「親しき中にも礼儀あり」とは、人付き合いの本質をよく表した言葉と言えるでしょう。そのような努力をすることで、いつまでも付き合い始めた時のような良好な関係が保てるのだと思います。
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