芸大通信教育部青春記③ ~はじめてのスクーリング

はじめてのスクーリングに行く

最初のレポートを提出し、まだ返ってきていないくらいの時期に、はじめてのスクーリングの機会がやってきました。7月だったと思います。

スクーリングとは自宅学習が主体の通信教育において、実際に登校して受ける授業のことです。

大阪芸大通信教育部のスクーリングは、講義科目は1.5日で1単位、実技・実習、演習科目は3日で1単位が認定されます。文芸学科の場合、必須のスクーリングの単位は30単位(うち講義6単位、演習24単位)ありました。計算すると大学の所定の期間に81日登校する必要があるということです。もし、必須でないスクーリングも受けるなら日数はさらに増えます。

スクーリングは主に春期、夏期、冬期(おそらく通学生が少ない時期)に開催されていて、3日間の演習科目は主に金土日、土日月、火水木に設定されていました。

中には6日〜9日と連続で受講する学生もいましたが、僕の場合は仕事で休みが取れなかったため、3日間の受講にとどまりました。

大阪芸大は大阪の南部、大阪府南河内郡河南町に位置していて、最寄駅は近鉄長野線の喜志駅です。大阪中心部から向かうには、近鉄阿倍野橋駅から、河内長野、あるいは富田林行きの準急に乗るか、急行の吉野あるいは尺土行きに乗って、古市で河内長野、富田林方向の電車に乗り換えるのが便利です。

喜志駅を降りて少し歩くと、大学行きのスクールバスターミナルがあって、通学時間には、そこに向かう大学生が集団をなして歩いていきます。喜志駅で降りると、着物を着た人や忍者の格好をした人(この人はこの後も何回か会った)もいて、芸大はやはり個性的なものだと感じました。

最初のスクーリングは「英語Ⅰ-1」だったように思います。元気な女性の先生で、声をよく出すように言われたのを覚えています。

スクーリング初日の昼休み、芸術情報センター内のアートホールにて通信教育部の入学式がありました。芸術情報センターは学生が乗り降りするバスターミナルのすぐ近くにあり、図書館、AVホールなどを備えた建物です。様々なイベントや展覧会も催されて、外部からの来訪者もあります。アートホールはその中の講堂のような空間です。中心の平面を円形様に段差が取り囲み、小さなコロッセオのような雰囲気を出しています。中心に置かれた巨大なパイプオルガンが象徴的です。

入学式のことは全く覚えていないのですが、アートホールには今も思い出す記憶があります。

2日目の昼休み、食堂での食事を終えて、手持ち無沙汰だったので、芸術情報センターの中を散策していました。入学式が行われたアートホールに入ると、1人の女性が一心不乱にオルガンを弾いていました。おそらく通学生だと思います。しばらく段差に座り、その演奏を聴いていました。その神秘的な姿が今も記憶に残っています。「彼女は今も芸術関係で何かを表現しているのだろうか?」その時のことを思い出すと、そのように考えてしまいます。

同期生で同人誌を作ることに

はじめてのスクーリングから2ヵ月後の9月に「英語Ⅰ-2」のスクーリングがありました。映画「ジュラシックパーク」の英文を訳すという内容で、先生が授業後に、喜志駅近くのフレンドリーというファミレス(現在は閉店)に受講生を連れて行ってくれて、ご馳走してくれたことを覚えています。

4ヵ月後の11月には「詩論」、その2ヵ月後の1月には「文章論」の受講のために大阪を訪れました。いずれも文芸の専門科目です。これらの授業は1人の講師が3日間受け持つのではなく、複数の講師が半日、あるいは1日を担当します。文章のプロの先生が教えてくれる講義はとても魅力的で、もっと長く学びたいという気持ちで一杯でした。おそらく他の受講生もそうだったと思います。

どちらかの講義の中で、先生から受講生同士で同人誌を作ったらどうかと提案がありました。文芸学科では期生ごとに有志で同人誌を作ることを勧めていて、後から知ったことですが1期生も2期生も冊子を作っていました。

3期生もその時に集まっていたメンバーを中心に作品を持ち寄ることになり、何冊か同人誌を製本しました。お互い年齢も環境も違い、会う機会もほとんどない通信生ですが、作品を読むと、不思議とその人との距離が縮まるような感覚がしました。

他人の作品を読むことは勉強になりますし、大きな刺激になりました。大学生活での良い思い出のひとつです。

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兼業作家。2023年4月『園井恵子 原爆に散ったタカラジェンヌの夢』(国書刊行会)上梓。歴史全般が興味の対象ですが、最近は大正~昭和の文化、芸術、演劇、映画、生活史を多く取材しています。プロフィール写真は愛貓です(♂ 2009年生まれ)。よろしければTwitterのフォローもお願いします。(下のボタンを押すとTwitterのページに移動します)。