芸大通信教育部青春記⑥ ~卒業への険しい道

易しい課題から提出するようにして、単位を徐々に取得できると、レポート作成のコツもつかめて、モチベーションも高いまま維持できるようになりました。通信課題が9割ほど終了し、卒業がいよいよ見えたところで問題が起こりました。

在籍年限という壁

大阪芸大通信教育部には在籍期限というものがあり、10年までしか在学できないという決まりがあります。つまり、10年以内に所定の単位を修得しないと、卒業できないということになります。

通信課題の8割ほどが終了し卒業を意識し始めた頃、すでに在籍8年目に入っていました。

僕は芸大に通い始めの頃こそ、頻回にスクーリングに参加していましたが、ある時を境にほとんど出席しなくなりました。それは、スクーリングだけ先に終わって、最後が通信課題だけだとせっかくの大学生活が寂しいと思ったので、意識的にスクーリングを残しておいたのでした。

過去の経験から、スクーリングは出席さえすれば、まず単位は認定されると考えていたのです。

以前に少し触れましたが、教科には年次が指定されていて、1年目に履修可能になる教科もあれば、2年目、3年目、4年目に履修可能になる教科もあります。それはスクーリングも同様です。

4年目以降はもちろんどの教科も選択可能なのですが、スクーリングの日程は、各年次を念頭に配置されています。つまり、未修のスクーリングの日程が重なっていて、受けられない教科が出てくる可能性があることに、この時点で気付いたのでした。

調べてみると、スクーリングの日程上、8年目では無理でしたが、9年目の最後までには全て受講可能とわかりました。

10年まで在籍可能なものの、どんなトラブルがあるかわからないので、9年で卒業することを目標としました。

どんなトラブルが起こるかわからない

9年目に入り、通信課題は全て終了して、スクーリングも順調に消化していきました。しかし、卒業が見えてきた最後の最後で思ってもみないトラブルが起こりました。病気で施設に入っていた祖母が危篤になったのです。

それはスクーリングの前日でした。病院に見舞いに行き、瀕死の祖母を見てスクーリングをどうするか考えました。今回のスクーリングを受けなければ今年度中の卒業は不可能になります。翌年もスクーリングはありますが、自分の体調不良や仕事の都合でいつ何が起こるかわかりません。

悩んだ末に祖母には申し訳なかったのですが、スクーリングに出席することにしました。「帰った時には祖母はもうこの世にはいないだろう」と大阪行きの電車の中で考えていました。

しかし、祖母が亡くなった知らせは帰るまで届かず、こちらから親にメールをするとまだ生きていると返事が来ました。周囲の予想に反して、祖母はこの後何ヶ月か生きました。

これも大学生活の思い出ですが、僕の他にも在籍期限ギリギリの人を何人も見ています。10年目で「卒業できるか厳しい」と話している人にも会いました。通信課題がひとつ不可になったばかりに、卒業が翌年に延びた人も見たことがあります。本当に何が起こるか分からないので、通信制の大学においては余裕を持って卒業計画を立てることをお勧めします。

さようなら学生生活

大阪芸術大学通信教育部の卒業証書

通信課題もスクーリングも所定の単位を修得したつもりでしたが、実際に卒業が決まるまでは落ち着きませんでした。何度も単位の計算をして間違いないことを確認していましたが、それでも124単位ギリギリであったため「もしかしたら」という気持ちがなくなりませんでした。

大阪芸大通信教育部の場合、卒業を知らせてくれるのはハガキです。他の通知と変わらないもので、ただ「卒業要件を満たしました」とかそのような文言が書いてあったように思います。

後に卒業証書も届きました。大学での卒業式の案内も届きましたが、仕事の関係でそれは行きませんでした。思えば卒業までに9年かかり、最初に周りにいた人たちの多くは学校を去っていました。年数が進むと、それぞれの学習スケジュールの違いもあり、スクーリングで会う機会は少なくなります。特に僕は大阪在住でもなかったため、級友と会う機会は学生生活後半はほとんどありませんでした。僕だけでなく、多くの通信生がそうなのだと思います。

そこに一抹の寂しさも覚えたものの、卒業できた喜びは大きかったです。特に僕の場合は9年という長い月日が必要であったこともあり、嬉しさもひとしおだったのだと思います。今も卒業証書は手に届く場所に大切にしまってあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


ABOUTこの記事をかいた人

兼業作家。2023年4月『園井恵子 原爆に散ったタカラジェンヌの夢』(国書刊行会)上梓。歴史全般が興味の対象ですが、最近は大正~昭和の文化、芸術、演劇、映画、生活史を多く取材しています。プロフィール写真は愛貓です(♂ 2009年生まれ)。よろしければTwitterのフォローもお願いします。(下のボタンを押すとTwitterのページに移動します)。